第82章

車内には沈黙が落ちていた。坂本が操るバンの走りは安定しており、ワイパーが一定のリズムでフロントガラスを拭う。車窓の向こうには、雨粒と街灯が引き伸ばした光の影だけが流れていく。向かいの席に座る和也は押し黙ったままで、その肩に滲んだ血の跡が薄暗がりの中で黒ずんで見えた。

春はノートパソコンの画面を睨みつけ、指を絶え間なく動かしている。

「第三生物の旧セキュリティゲート、突破した。システムがクソすぎる。パスワードの複雑さなんて俺が小学生の時に使ってたPCルーム以下だ。ただ、地下三階の権限だけは別枠で隔離されてる」

葵はシートに深くもたれかかり、少し荒い息をついた。

「地下三階には触れないで...

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